前回のコラム「ペットフードに穀物(グレイン)は必要?」では、穀物とはそもそも何か?なぜペットフードに必要なのか?というお話をしました。 今回は、穀物を含むフードについて、飼い主さんからよく聞かれる疑問について、Q&A方式でお答えします。
目 次
グレインフリーとグルテンフリーは何が違うの?
グレインは穀物のこと、グルテンは主に麦などを製粉して得られたほぼ純粋なタンパク質のことです。

グレインは穀物のことで、主にイネ科植物(米、麦、トウモロコシ、キビ)の種子のことを指します。グレインフリーのペットフードは、これらの穀物を含まないフードということです。
穀物は広義の意味では豆類も含まれるため、イネ科植物+豆類も含まないグレインフリーのフードもあり、製品によってばらつきがあるようです。
一方、グルテンは穀物(グレイン)を製粉して得られるほぼ純粋なタンパク質のことで、主に麦から抽出されたものを指します。グルテンフリーのペットフードはこのタンパク質を含まないフードということです。
つまり、図で示すと下のようになります。

最近、市販されているワンちゃんやネコちゃんのフードにグレインフリーやグルテンフリーという記載を見かけることが多くなりました。これらをフリーにした方がいいのか否か、次のご質問でお答えしたいと思います。
穀物(グレイン)は食物アレルギーを起こしやすいからなるべく与えない方がいい?
穀物が原因となる食物アレルギーは比較的少なく、穀物アレルギーではない犬と猫にとって穀物は、むしろ非常に優れた食材となります。
食物アレルギーとは、食物に含まれる主に「タンパク質」に対して体が異物と認識してしまうため起こる反応です。
つまり、タンパク質であればすべてが食物アレルギーの原因になる可能性があります。
診断の補助として血液検査が普及してきたため、食物アレルギーの疑いのある子は検査を受けたことがあるかもしれません。
検査項目としては、肉類、魚類、穀物、野菜、乳製品など様々な食品が挙げられています。
犬と猫の食物アレルギーに関して様々な論文を分析した結果、「牛肉や鶏肉などのアレルギーに比較して穀物によるものは少ない」ということが報告されています。1)


また前回のコラム「ペットフードに穀物(グレイン)は必要?」でお話しした通り、穀物はワンちゃんやネコちゃんにとってすぐれた栄養源となることから、穀物に対してアレルギーを持っていない子の食事で穀物を制限する必要はありません。
ここで、「でもワンちゃんもネコちゃんも肉食動物の性質を強く持っているから、肉類の消化は得意だけれど、穀物の消化は苦手でしょ?」と思われた方も多いのではないでしょうか?
その疑問には、次の2つの質問でお答えします。
ワンちゃんやネコちゃんは穀物(グレイン)をちゃんと消化できるの?
はい、適切に調理された穀物については十分に消化することができます。
穀物に含まれるデンプンは、調理する前の状態だと人間でも十分に消化することができません。ですからお米であれば、炊いて柔らかいご飯に変えてから食べていますね。
このように水とともに加熱して調理をすることで、デンプンが「糊化」し、十分に消化吸収することができるようになります。
ペットフードに含まれる穀物も、適切に調理されているため、ワンちゃん・ネコちゃんが良質なエネルギー源として利用することができます。
ただし、ワンちゃん・ネコちゃんが消化できる適切な量に調整されていることが重要です。この「適切な」という部分は様々な研究によって数値が明らかになっており、現在市販されているフードでは問題なく消化できていることがわかっています。2)
ワンちゃんは元々肉食ではないの?
いいえ、元々野菜や種子も食べる雑食でした。

ワンちゃんの祖先は100~200万年前に存在したハイイロオオカミと言われています。
オオカミというと肉食のイメージがありますが、ハイイロオオカミは雑食であったことがわかっており、元々動物や鳥の他に、野菜・種子や果物なども食べていたようです。
このハイイロオオカミが約3万年前から人間と共に暮らすようになり、農耕によって作られた穀類などを食べる機会が増え、デンプンの消化能力がさらに向上したということが遺伝子レベルで証明されています。3)
今回は、飼い主さんからよく聞かれる穀物(グレイン)に対する疑問にお答えしていきました。
ワンちゃんやネコちゃんの穀物(グレイン)の消化吸収に関する研究は様々な方面で行われているので、正確な情報のもと、おうちの子に必要かどうかを判断していくのがいいのではないでしょうか?
参考文献
- 1) Mueller et al. 2016
- 2) Nutrient requirements of dogs and cats. NRC 2006, Meghan et al. 2017, Forrester et al. 2011, Walker et al. 1994, Morris et al. 1977, Kienzle et al. 1993a 1993b, de-Oliveia et al, Meyer and Kienzle 1991
- 3) Axelsson E. 2013