高齢のネコちゃんの身体には、目に見える表面的なものから身体の内部までさまざまな加齢性変化が起こります。
たとえば聴力や嗅覚の低下、傷の治癒力の低下、心臓・肺・消化吸収機能の低下、免疫力の低下、爪がもろくなる、認知機能の低下などです。1)
このような身体の変化が起こった結果、以下のような目に見える行動の変化につながります。
- ・ 食事の量が減る
- ・ グルーミングや爪とぎの頻度が減少する
- ・ 遊ぶことや運動することが減る
- ・ 寝ている時間が増える
- ・ 過剰に鳴く
ただし、これらの行動の変化は病気によるものか加齢によるものかを判断するのは難しいため、まずは飼い主さんがネコちゃんの変化に気づいてあげて、獣医師に相談してみるのがよいでしょう。
飼い主さんができること①「定期的に健康診断に連れていく」
一般的に高齢のネコちゃんに多いとされる病気として、
- ・ 慢性腎臓病
- ・ 変形性関節症
- ・ 甲状腺機能亢進症
- ・ 歯周病
- ・ 糖尿病
- ・ 腫瘍
などが挙げられます。
こちらに挙げたような加齢による行動の変化は、実は病気のサインのこともあります。 変化に気づくことと同時に、病気を早期発見できるように動物病院で定期健診を受けることも重要です。
できれば若いうちから年に1~2回は動物病院で健康診断を受けて、愛猫が健康なときの状態を知っておくといざ異常があったときにすぐに詳しい検査に移ることができるため、おすすめです。
たとえば血液検査の数値も正常値には幅があるので、愛猫の日頃の数値を知っておくことが大切です。獣医師も健康なときの様子やデータがあることで、病気の早期発見ができるようになります。
飼い主さんができること②「生活環境の整備」
病気の有無に関わらず、高齢のネコちゃんの行動の変化に配慮した生活環境を整えてあげることも大切です。2)次の項目に気をつけてみましょう。

飼い主さんができること③「高齢のネコちゃんに適したフードを選ぶ」
高齢になってくると必要な栄養素やそのバランスも変化するので、ずっと同じフードをあげるのではなく、高齢のネコちゃん専用のものに切り替えることも大切です。
たとえば、以下のような配慮がされているものを選んであげるのがおすすめです。
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・ 必要なカロリーやタンパク質が摂れる消化吸収の良いフードネコちゃんは、7~11歳頃までの中高齢期では運動量が低下し、成猫時と同じカロリーを摂ると太ってしまう子が多くなります。
それに対し、12歳を超える高齢期では消化機能低下の影響のほうが大きくなり、痩せてくる子が増えてきます。また、筋肉量の低下も気になるところです。とはいえ、ネコちゃんによって体型や代謝、体質は異なるため、それぞれに適したカロリー密度やタンパク質が配合されている消化吸収の良いフードを選ぶようにしましょう。
そして、適正な体重・体型を維持することを目標にしましょう。 -
・ 抗酸化成分が強化されたフード抗酸化成分とは、細胞の老化を引き起こすといわれている物質であるフリーラジカルの影響を抑えるもので、高齢のネコちゃんにはぜひ積極的に摂取してほしい成分です。
主な抗酸化成分として、ビタミンE・ビタミンC・タウリン・ルテインなどがあり、複数の抗酸化成分を組み合わせることで相乗的に働いてくれます。 -
・ リンの量を一定の割合で制限したフードミネラルのひとつであるリンは、高齢のネコちゃんが摂りすぎると腎臓に負担がかかってしまうことがあります。
とくに腎臓病のネコちゃんの場合は、専用のフードでリンの量を制限することが必要になってきます。
この他にも各種お悩みや疾患に特化したフードもたくさんありますので、必要に応じて動物病院で相談してみましょう。
まとめ
ネコちゃんとできるだけ長く一緒に楽しく過ごすために、愛猫が高齢もしくは高齢に差しかかっている飼い主さんは、ぜひ上記のポイントを確認し、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
まだ愛猫が若いという飼い主さんも、健康診断に連れていくなど、今のうちから将来のためにできることもあります。
ぜひネコちゃんの「健康寿命」を延ばし、快適に過ごせるよう一緒にがんばりましょう。
参考文献
- 1) Ray M., et al. 2021 AAFP Feline senior care guidelines, J Feline Med Surg, 2021; 23: 613-638.
- 2) Ellis S.L.H., Rodan, I., Carney, H.C., et al. AAFP and ISFM feline environmental needs guideline, J Feline Med Surg, 2013; 15: 219-230.
- 3) aflamme DP, Nutrition for aging cats and dogs and the importance of body condition, Vet Clin North Am Small Anim Pract, 2005; May;35(3):713-42.