皆さんはワンちゃん・ネコちゃんにどんなフードを与えていますか?
ペットフードの原材料にはお肉や穀物がよく使われていますが、最近では穀物を使用していないフードも販売されています。
「グレインフリー」と表示されているフードを見かけたことのある方も多いと思います。
フードに穀物が含まれているかいないかで、ワンちゃん・ネコちゃんにどのような影響があるのでしょうか。
今回から二回にわたって、獣医栄養学の専門医による新しい知見などもふまえながら、ペットフードと穀物の関係について見ていきましょう。

■ペットフードに使われる穀物(グレイン)ってどんなもの?
ペットフードに使用される穀物とは、一般的に米・麦・トウモロコシ・キビなど「イネ科の種子」のことを指します。
※メーカーにより、広義の意味で「豆類」を含む場合もあります。
お米や小麦などはひとことで『穀物』とまとめられますが、実は使用される穀物の『種類』によって、それぞれ含まれている栄養成分の特徴は異なるのです。
●お米と小麦、栄養成分は同じじゃない!
例えばお米は、他の穀物と比較して繊維質が少ないことが特徴です。
そのため、お米はきわめて消化の良いデンプン源であり、『健康的な消化』に配慮したフードに多く使用されます。
※全体の栄養バランスを考慮しての調整となるため、全てに使用されるとは限りません。

また、穀物が入っていると、炭水化物もしくは糖質や繊維が多いフードと連想される方もいますが一概にそうとはいえません。
●穀物は、使う部位によって摂れる栄養バランスが違う?!
「穀物」とひとことで言っても、使う部位によって含まれる栄養バランスはさまざまです。

例えば「小麦」だと、
『小麦胚芽』…ビタミン類、必須脂肪酸、抗酸化成分を豊富に含む
『小麦ブラン(ぬか、ふすま)』…食物繊維、ビタミン類を豊富に含む
『小麦グルテン』…良質なタンパク質を豊富に含む
※消化されない『もみ殻』の部分は、ロイヤルカナン製品には使用されません。

■なぜペットフードには穀物(グレイン)が含まれているの?
ここまで穀物について詳しく見てきましたが、次は穀物がどんな目的でペットフードに入っているかを見ていきましょう。
穀物は、犬や猫の品種、ライフステージや特別なケアポイントに合わせて『栄養成分のきめ細やかな調整』をするうえで欠かせない栄養源となります。
例①腎臓病のワンちゃん、ネコちゃんの食事
腎臓病の場合、食事に含まれるミネラルのひとつ、『リン』を低減することで、診断後の寿命が長くなったことが報告されています。
小麦グルテンやコーングルテンは、消化性の優れた高品質なタンパク質であるうえ、リンの含有量が少ない原材料として利用されることがあります。

例②高齢のワンちゃん、ネコちゃんの食事
体には老化や病気の原因になる過剰な活性酸素を取り除くシステムがあり、これを抗酸化力といいます。
年を取ってくると、ヒトと同様にワンちゃん・ネコちゃんも体の抗酸化力が低下してくるため、複数の抗酸化成分を食事から補うことが大切です。抗酸化成分を多く含む原材料として、コーンや小麦の胚芽を含む原材料が用いられることがあります。
その他にも『皮膚や被毛の健康』に配慮したい場合や『泌尿器の健康』に配慮したい場合には、メチオニンやシスチンなどのアミノ酸が豊富に含まれるコーングルテン(コーン由来のタンパク質)などが原材料として用いられます。

穀物にも種類によって栄養成分の特徴があること、また使う部位によって栄養バランスが違うことが分かっていただけたでしょうか。
フード中の穀物は「栄養成分のきめ細やかな調整」という役割を果たしていたのですね。
みなさんに穀物について知ってもらったところで、次回のコラムでは穀物が含まれているフードへの、飼い主さんの疑問に答えていきます。