Royal Canin

腎臓病

最近、おしっこの量や水を飲む量が増えていませんか?

腎臓のダメージを受けたところは元には戻らず、15歳以上の猫の約30%が腎臓病だと言われています。腎臓病の最初の症状はおしっこに現れます。こまめに尿検査を受けて、腎臓病を早期に発見し、病気の進行を遅らせましょう。

犬と猫の腎臓はどこにあるの?

腎臓は胃や肝臓よりも後ろにある、ソラマメ型をした臓器で、左右に1つずつあります。腎臓にはさまざまな機能がありますが、その代表的なものは尿を作ることです。そして、尿と一緒に不要な老廃物を捨てて健康な体を維持しています。

腎臓の位置

腎臓のはたらき

腎臓にはさまざまな機能がありますが、その代表的なものは尿を作ることです。

尿を作る

●ろ過する…血液と共に運ばれてくる身体にとって不要なもの(老廃物)を捨て、薄く多量の尿のもととなる原尿をつくります。
※体重10kgのビーグル犬の場合、1日に作られる原尿の量は53.3リットルほどといわれています。

※体重10kgのビーグル犬の場合、作った原尿のうち53.1リットルが再吸収され、0.2リットル~0.25リットルの尿をつくるといわれています。

その他
  • 赤血球を作らせる。
  • 血圧を調整するホルモンを作る。
  • ビタミンDを活性化し、カルシウムの吸収を助ける。
腎臓の像の構造(拡大図)

ネフロン(nephron:腎単位)とは、腎臓の基本的な機能単位のことです。具体的には腎小体とそれに続く1本の尿細管のことを指します。人間の場合は左右の腎臓に合わせて200万個、犬では80万個、猫では40万個ほど存在し、各ネフロンでろ過、再吸収、分泌、濃縮が行われ、尿が作られていきます。腎疾患になりこのネフロンのはたらきが様々な原因で損なわれていくと、腎臓が正常に機能しなくなり、ろ過や再吸収などが行なわれなくなり、老廃物が体にたまるなど、さまざまな障害が起こってきます。

腎臓病(慢性腎臓病・腎疾患)とは?

腎臓に障害が起こると、血液中の不要物(老廃物)をろ過したり、身体に必要な水分を再吸収するはたらきができなくなってしまいます。

腎臓病(慢性腎臓病・腎疾患)とは?

犬や猫の腎臓は、数十万個の「ネフロン」から成り立っています。このネフロンが機能することで腎臓はさまざまな働きを行なっているのです。腎臓病は、ネフロンが傷ついて働けなくなってしまうことによって起こります。ネフロンがおよそ半分まで残っている間は症状はありません。その後、残りのネフロンも傷ついていき、残りのネフロンが25%(1/4)くらいになるまでの間に水をたくさん飲む、尿の量が増えるなどの症状が現れてきます。

そしてほとんどのネフロンが働かなくなってくると、尿として体の外に出されるべきだった毒素が十分に出されなくなるため、尿毒症といわれる非常に危険な状態になります。血液中に毒性のある不要物がたまって嘔吐や下痢などを起こしたり、水分を捨てすぎてしまって脱水症状になったりしてしまいます。

腎臓病は進んでいく病気です

腎臓は一度障害を受けると、その機能は回復しません。
そしてなかなか症状がでにくいという特徴があります。

傷ついて壊れてしまったネフロンは、残念ながら元には戻りません。腎臓病の症状は、ネフロンが壊れてもとの半分以下になるまで現れません。これは、残っているネフロンが壊れてしまったネフロンの分も仕事をしているためです。

高齢動物と腎臓病(腎疾患)

高齢になると腎臓病になる割合が高くなります。

腎臓病の原因はまだよくわかっていません。腎臓病は、腎臓に障害を与えるさまざまな病気などが、長年にわたって少しずつ腎臓の組織を壊し、ある一定のダメージを超えると急速に進行すると考えられており、歳をとった犬や猫ほど、腎臓病になる割合が大きくなります。
下のグラフを見てわかるように、猫の場合、15歳を超えた猫の30%が慢性腎臓病になっています。
また、犬は慢性腎臓病になっても、症状があらわれにくく、気付いたときには深刻な状態になっているケースが多くみられます。犬猫どちらにとっても、高齢になると最も注意したい病気のひとつといえるでしょう。

年齢による慢性腎臓病の分布

腎臓病とうまく向きあいましょう

シニア期の犬や猫にとって、腎臓病は避けて通ることがなかなか難しい病気です。でも、飼い主さんが必要以上に神経質になってしまうと、さらに犬や猫にストレスを与えることになってしまいかねません。それよりも避けられないものなら、この病気とうまく向き合うことを考えたほうが建設的です。どうすれば症状を軽減させることができるか、何をしてあげるとより快適なシニアライフを送らせることができるかを考えてあげましょう。

猫と犬の腎臓の違い

腎臓のつくりの違いから、猫よりも犬のほうが慢性腎臓病はより深刻です。

リビアヤマネコ

腎臓のつくりは、犬と猫では違いがあります。腎臓には血液を「ろ過」する働きと、必要なものを「再吸収」する働きがあります。犬の腎臓はろ過に重点をおいたもの、猫の腎臓は再吸収に重点をおいたものとなっています。
猫の祖先は古代エジプト王朝の周辺で暮らしていた「リビアヤマネコ」だと言われています。砂漠地方出身である猫にとって、水分を再吸収する腎臓の働きは、生きるうえでたいへん重要だったのです。この違いが腎臓病になったときの病気の進行度の違いに影響しています。
猫は腎臓病になると再吸収する働きが下がって水分を失いやすくなり、血液が濃くなります。その結果、実際以上に毒素の値が高くなり、早い段階で症状が現れます。このため水分を補ってあげること(補液)で症状を改善することが期待できます。しかし、犬の場合、ろ過をする機能が落ち、身体の中に実際に毒素が溜まることによって初めて症状が現れます。そのため気付いた時には病気が進行していることが多くみられます。早く病気を見つけることが重要です。

猫と犬の腎臓の違い

猫と犬の腎臓の違い

慢性腎臓病(腎疾患)が疑われる症状

早期発見のためにも慢性腎臓病が疑われる症状をチェックしてみましょう。

犬と猫の腎臓病は、症状が現れたときや検査で異常が確認されたときには、かなり進行してることも珍しくありません。最も早期に現れる可能性がある症状は、水をよく飲み、たくさん尿をするようになることです。
また、定期的に健康診断を行い、できるだけ早期に腎臓病を発見してその進行を遅らせることが重要です。

このような場合は腎臓病に注意!
このような場合は腎臓病に注意!

以下の症状に気づいたら、すぐに動物病院に相談しましょう。

  • 水をたくさん飲むようになった
  • たくさんおしっこをするようになった
  • おしっこのにおいが気にならなくなった、においが減った
  • 便秘がちになった
  • 被毛がぼそぼそしてきた
  • 食欲がなくなってきた
  • 口臭が気になるようになった
  • やせてきた
  • 歯グキが白くなってきた
  • よく吐くようになった

腎臓病(腎疾患)の治療について

腎臓の正常な部分の機能を維持させる治療を行います。

一度障害を受けて損傷してしまったネフロンは、元には戻りません。そして傷ついてしまった部分が行っていた働きを、残された正常なネフロンが請け負うことになり、その負担が増えてしまいます。食事療法や輸液を行って、残された正常なネフロンを保存することにより、病気を悪化させないための治療を続けます。病気が進んで尿毒症が出てしまった場合はその症状を軽減することが治療の目的となります。

腎臓病の治療

  • 病気は絵々に進行していく
  • 病気そのものが改善することはない
  • 保存療法(病気の進行を選らせる)
    食事療法・内科療法・輸液療法など
  • 対症療法(症状を軽減する)
    輸液療法・食事療法・内科療法など

腎臓病の食事管理

慢性腎臓病用のフードは、腎臓の機能に負担をかけないようにできています。

食事療法食のポイント

腎臓病に用いられる食事療法食は下のような点に配慮してつくられています。

①腎臓に負担をかけ、腎臓病を悪化させる栄養素「リン」の量を調整しています。

腎臓病を悪化させる栄養素に「リン」というものがあります。リンはもともと骨や歯、細胞をつくるために必要で、体にとってとても大切な栄養素なのですが、腎臓病の犬や猫は、腎臓機能の低下によって余分なリンが捨てられなくなり、過剰に体にたまったリンが慢性腎臓病を悪化させる重要な原因となることが知られています。このため、このリンを制限した療法食を与えるよう、食事管理が必要です。実際に腎臓病になった犬と猫にリンを制限した腎臓病用の食事を与えると、犬の場合でも猫の場合でもリンを制限した食事を与えなかった場合よりもおよそ3倍も長く生きることができたという下のグラフのようなデータがあります。
また、ナトリウムについては犬や猫の初期~中期の腎臓病では、とくに制限する必要がないと考えられています。

リンの制限

②健康な腎臓のはたらきをサポートする栄養素を増強しています。

③進行の度合いによってタンパクの量を調整しています。

犬の場合

腎臓病は、老廃物をおしっこの中に排泄する機能が弱るため、進行すると尿毒症などのリスクがあります。タンパク質が分解されると老廃物が生じるため、進行した腎臓病の場合は、食事中のタンパク質の量を減らす必要があります。しかし、タンパク質は体をつくる上で大切な栄養素であるため、初期の腎臓病で尿毒症の兆候がみられない場合にはタンパクの制限は必要ありません。このため、初期の腎臓病のための療法食と進行した腎臓病のための食事療法食が必要です。

猫の場合

猫はもともと完全な肉食でとり入れたタンパク質で体を維持し、エネルギー源としても消費しています。このため、猫の腎臓病用の食事は初期でも進行した場合でも、タンパク質を制限しすぎることはありません。

④嗜好性を高く(おいしく)設計しています。

腎臓病の犬や猫は、食欲が落ちていることが多いため、腎臓病用の食事療法食の中で食べてくれるものを選択することが重要です。

食事を与えるときの工夫

進行した腎臓病の犬・猫で、食欲があまりない場合、食事療法食を与えるときに、消化吸収を最大にするために、毎日の食事を3~4回に分けて与えるようにしてあげてください。38-39℃くらいに温めて与えると、より嗜好性を高める(食いつきをよく)することが期待できます。

食事を与えるときの工夫

慢性腎臓病のリスクは年齢とともに増加するため、腎臓病の疑いが見られなくても、7歳を過ぎたらリンの量を抑えた中・高齢期用の食事を与えることをおすすめします。

簡単な検査をこまめにしましょう

尿検査は腎臓病以外にもさまざまな病気を発見する手がかりになります。

これまでお話ししてきたように、腎臓病は早期発見、早期治療が重要です。慢性腎臓病の検査には、尿検査、血液検査、エコー検査などがありますが、より慢性腎臓病を早期の段階で発見できるのは尿検査やエコー検査です。特に7歳を過ぎたら、このような検査をできるだけこまめに(目安3ヵ月に1回)受けることをおすすめします。尿検査では、初期の慢性腎臓病、肝臓病、下部尿路疾患、糖尿病などを発見することができます。

リンの制限
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ご自身のワンちゃん・ネコちゃんで気になることがあったら、必ず動物病院で受診しましょう。