Royal Canin

下痢(便秘)

便は身体の中の鏡です。

犬や猫は体調が悪くても、言葉で伝えることができません。ちょっとした変化に気づいてあげることが病気の早期発見につながります。便の硬さ、色、回数、排便時の姿勢などを日頃から観察しましょう。

犬と猫の下痢とは?

便(うんち)の状態は犬・猫の健康状態を測るバロメーターです。
体の不調のサインとして飼い主さんにもわかりやすい「下痢」についてよく知っておきましょう。

一般にもよく使われる「下痢」という言葉ですが、これは病気の名前ではなく、糞便中の水分が増加したやわらかい状態の症状を指す言葉です。正常な便(うんち)に含まれる水分の量は約70%程度です。これに対して、水分を80%以上含む場合を「下痢」と呼びます。水分が90%以上になると便は水のようになります。

下痢は、なんらかの異常によって小腸や大腸で水分を十分吸収できなかったり、腸管へ水分が出てくることによって起こります。

便の状態の比較
腸(大腸・小腸)の位置

下痢の原因

下痢にはさまざまな原因が考えられます。代表的なものについてご紹介します。

消化吸収不良

犬と猫の下痢の中で、特に多く見られるのが、食事の影響を受けた消化吸収不良による下痢(浸透圧性の下痢)です。

浸透圧とは?
水だけが通過できる膜で仕切った容器に濃度の違う2種類の液体を同じ水面まで入れると、水が濃度の濃い液体の方へ移動して、濃い方の液体は水分子で薄まって、もう一方の液体と同じ濃度になります。この水を移動させる力を「浸透圧」といいます。

浸透圧のしくみ
浸透圧のしくみ

急激にフードを変えてしまったことや食べ過ぎ、消化酵素が少ないなどの原因で腸の中での消化・吸収力が落ちてしまうと、消化されていない物が腸の中に残り、内部の浸透圧が上がります。すると腸の中に過剰に水分があることになり、それが便(うんち)と一緒に体の外に出されて下痢になってしまうのです。たとえば、消化酵素のひとつ、ラクターゼが不足しているため、牛乳などの乳製品に含まれる乳糖を分解できずに水っぽい下痢を起こしてしまう「乳糖不耐症」はこのパターンに含まれます。

ウイルス・細菌
浸透圧のしくみ

パルボウイルスやジステンパーウイルス、コロナウイルスなどのウイルスに感染すると、嘔吐、発熱などを伴う下痢を引き起こします。死にいたることもあります。また、サルモネラ菌・大腸菌などの細菌も下痢を引き起こす原因となります。ウイルスはワクチンによって感染を予防することが大切です。

毒物・薬物
浸透圧のしくみ

殺虫剤や殺鼠剤、鉛、ある種の植物などを口にして中毒を起こすと、下痢になることがあります。激しい下痢だけでなく血便、嘔吐をともなうので、大至急動物病院で解毒処置や胃の洗浄などを行う必要があります。

アレルギー反応

食べものの中に含まれる特定のタンパク質に対し、アレルギー反応を起こして下痢になることもあります。獣医師の診察を受け、アレルギーに対応した食事を与えます。

寄生虫
寄生虫

小腸や大腸の中に寄生虫がいると下痢を起こすことがあります。寄生虫が長く寄生していると下痢が長引いてしまい栄養状態が悪くなってしまいます。便を検査して寄生虫がいることが分かったら、駆虫薬を使って寄生虫を駆除します。

ストレス
ストレス

犬も猫もストレスにより下痢が起こる場合があります。

下痢の際の食事管理

下痢の際には消化管に対する負担、刺激を少なくした食事を与えます。

フードの影響による下痢はとても多いので、とくに食事の管理が重要です。下痢のときには消化管に対する負担、刺激を抑えることが重要です。下痢の原因はさまざまですので原因に応じて適切な食事療法食を選ぶ必要があります。
また、下痢をしているときには1回食事を抜いて腸を休ませたり、一時的に食事の量を減らしたりして消化管に負担をかけないようにすることが大切です。一過性の下痢はこれでおさまる場合が多くあります。

療法食のポイント

下痢に用いられる療法食は下のような点に配慮してつくられています。

  1. 消化がよく設計されています。
  2. 脂肪の量を調整しています。
  3. 消化管の負担を少なくするために食事の量を減らしたいときや、やせてきたときなどは脂肪が多くカロリーの高い食事が適しています。一方、脂肪の消化吸収がうまくできないときは脂肪の少ない食事が適しています。原因に応じて食事を使い分けることが重要です。

  4. 腸内の環境に配慮しています。
  5. 療法食のポイント

猫の便秘

便秘とは

便秘は、消化管の異常運動や、脱水などによって便(うんち)が固くなり、排便が困難になった状態です。

便秘の原因

猫の便秘には、さまざまな原因が考えられます。

脱水
脱水

寒い気候などで水を飲まなくなったり、腎臓病などの疾患でおしっこの量が多くなることなどで起こります。

腫瘍

腸や肛門周囲の腫瘍が排便の邪魔をしたり、痛みで排便ができなくなります。

神経系の疾患

脊椎神経を損傷すると、腸の動きが悪くなったり、排便姿勢を取ることができなくなります。

骨盤骨折

交通事故などで骨盤を骨折し、その後、骨盤腔が狭くなって治癒すると、腸を圧迫して便が出にくくなります。

巨大結腸症

さまざまな原因で腸に便が溜った状態が続くと、腸が異常に太くなります。その状態が続き悪化すると、自力で排便ができなくなったり、手術で腸を切り取ることもあります。

※注意
高齢の猫の便秘は、腎臓病の初期症状かもしれませんので、獣医師に相談しましょう。

便秘の治療

原因によって異なりますが、食事を変えることで便の状態が改善する場合もあります。可溶性の食物繊維が豊富な食事は、便の水分量を高めることによりスムーズな排泄をサポートします。

また脱水が原因の便秘は、点滴などの補液で改善することがあります。おうちで清潔な水をしっかり飲めるように気をつけましょう。

脱水
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ご自身のワンちゃん・ネコちゃんで気になることがあったら、必ず動物病院で受診しましょう。