心臓は全身に血液を送るとても重要な臓器です。まずはそのはたらきから見てみましょう。
心臓は全身に血液を送るポンプのようなものです。このポンプのはたらきによって、体中に酸素と栄養素が供給されています。
心臓は4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)に分けられています。右心室から血液を肺に送る血管を肺動脈、左心室から全身に血液を送る血管を大動脈といい、全身から集まった二酸化炭素の多い血液は後大静脈と呼ばれる血管から右心房→右心室→肺動脈→肺へと運ばれ、肺からの酸素の多い血液は肺静脈と呼ばれる血管から、左心房→左心室→大動脈の順番で全身に運ばれます。
心臓病は全ての犬のうち10~15%に起こるといわれています。
心臓がポンプとして働くためには、心臓の筋肉や弁が正しいリズムで動き、血管に血液をスムーズに送り出すようにしなければいけません。これらのどの部分に異常が起きても、心臓はきちんと働くことができず、心臓病になってしまうのです。
心臓病になると、心臓がポンプとしての役割を果たせなくなり、全身に血液を送ることができなくなっていきます。その結果、全身に十分な酸素や栄養を送ることができず疲労や呼吸困難、食欲の低下などがみられるようになり、体に水分がたまるようになるとむくみが出たり、おなかがふくれることもあります。
心臓病には生まれつきのものもありますが、生まれつきでなく、後から起こるものがほとんどです。
現代の犬が亡くなる原因(死因)のトップは「がん」ですが、2位は心不全などの「心臓病」で、がんと心臓病で死因の60%を超えるそうです。全ての犬のうち10~15%が、10歳以上の犬では30%以上が心臓病であるといわれています。
僧帽弁閉鎖不全症は、トイ・プードルやマルチーズなどの小型犬に多くみられる病気です。心臓の左心房と左心室の間には「僧帽弁」という弁がありますが、何らかの原因でこの弁がうまく閉じなくなると、血液が逆流してしまいます。この病気は初期には症状がなく、健康診断などで獣医師が心臓の雑音に気づいて、発見される場合もあります。
以下のような犬種によくみられます。
- プードル
(ミニチュア&トイ) - チワワ
- ダックスフンド
- ビーグル
- コッカー
スパニエル - キャバリア
- ヨーキー
- マルチーズ
- ミニチュア
シュナウザー
心筋症とは、心臓の筋肉の厚みが変化したり正常に働かなくなることによって、うまく全身に血液を送れなくなる病気です。そのなかでも拡張型心筋症は大型犬に多く、メスよりオスに多いといわれています。初期では特に症状は現れませんが、進行すると咳や呼吸困難のほか、お腹がふくれたり、ひどい場合は失神したり突然死することもあります。
以下のような犬種によくみられます。
- ドーベルマン
- ボクサー
- コッカー
スパニエル - グレートデン
- セント
バーナード - アイリッシュウルフ
ハウンド
心臓病といっても初期の段階から治療をすれば、進行を遅らせたり、症状を軽減したりできる場合があります。早期発見がとても大切なのです。
犬と猫の心臓病は咳などの症状が現れてから発見されることが多く、その時には既に心臓病が進行しています。このような場合はもちろん、もし一見何も変わったことがなくても獣医師から心臓病の疑いを伝えられたら、既に血液を運ぶ心臓のポンプ機能に衰えがあるということなのです。心臓病は初期では病気の進行のスピードを遅くしてあげること、病気が進んでからは症状を軽くしてあげることが治療の大きな目的になります。また、妊娠、過度の運動、暑さ、呼吸器の感染、出血、貧血など心臓病を悪くさせてしまうことには注意が必要です。
心臓病に用いられる食事療法食は下のような点に配慮してつくられています。
1 心臓病の進行度合いによって段階的にナトリウム(塩分)を制限しています。
2 心臓のはたらきをサポートする栄養成分(タウリンなど)を配合しています。
3 心臓病とともに起こる傾向がある慢性腎臓病も考慮しリンの量を制限しています。
4 心臓病の進行とともに増える活性酸素に配慮しています。

