栄養成分名
食物繊維
基本情報
食物繊維は消化されないため、体内で栄養にはならないが、整腸作用を持つ。消化管内の栄養素を十分に吸収するためには、腸内通過時間はある程度ゆっくりである必要があるが、遅すぎると便秘を起こす。適量の食物繊維をバランスよく含むことで腸内通過時間が適度に保たれる。
また食物繊維には様々な種類があるため、その整腸作用のメカニズムや働きはさまざまである。
体内での働き
食物繊維は水に溶けるかどうかの物理的な性状により、大きく2つに分けられる。

【不溶性繊維】
- ● 腸内容物のカサを増すことで腸の蠕動運動を促し、正常な腸内通過時間を保つ。また糞便の硬さと容積を増加させる(Silvio 2000)。
- ●一般的には便通を改善するが、ネコの場合便秘を助長する可能性もあるため、与える量の調節が必要となる。
【可溶性繊維】
- ●オオバコの種子・種皮(サイリウム)に含まれる可溶性繊維は強い水分保持能力を有し、消化管内容物の粘調性を増し、消化管内容物の輸送速度に影響を与えることがある。
【発酵性繊維】
- ●サイリウムを除き、可溶性繊維の多くは、大腸内で乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」の栄養源となり発酵するため、発酵性繊維と呼ばれる。また「悪玉菌」と呼ばれる大腸菌やサルモネラ菌には利用されないため、善玉菌に優位な環境を作ることが期待される。
- ●また、この発酵において複数のメリットが報告されており、プレバイオティクス成分として腸内環境を良い状態に保つことに役立つことが知られている。
①発酵により生じた短鎖脂肪酸は、大腸粘膜の栄養源となる。
②発酵に伴って結腸内容物が酸性化するため、アンモニアの産生と吸収が減少する。
③善玉菌は悪玉菌に比べ、有害物質であるアンモニアなどの産生が少ない。 - ●腸内環境が良い状態であれば、便は適正な硬さに保たれ、臭いも減る。
➡フラクトオリゴ糖
フードにおいて期待される役割
【毛玉のケア】
【便秘】
- ●不溶性繊維が便のカサを増すことで、腸運動を刺激する。
➡主にセルロース - ●便の粘性を増す。
➡サイリウム
【体重管理】
- ●食事全体のカロリーを希釈し、かつ満腹感を与える。
- ● 高タンパク質・高食物繊維食は、筋肉を維持しながら体脂肪を減らすことができ、体重の減少率も高いという報告がある(German 2010)。
➡セルロース、サイリウム

【糖尿病】
- ●消化管での糖吸収を遅らせる。インスリン感受性を増加し、消化管ホルモンの放出により栄養素の代謝コントロールを改善する。特に粘性を持つサイリウムの有用性が最も高いと考えられている(Nelson 2000)。
➡サイリウム - ●食事全体のカロリーを希釈するため体重管理に有用である。その結果糖尿病にも有用と考えられる。
【高脂血症】
【その他】
- ●消化管で胆汁酸に結合することでその排出を促進する。
- ●肝性脳症の犬の長期的な食事管理に有用である(Marks1994, Center 1998)。