肝臓は再生能力が非常に高く、肝臓の一部にダメージを受けても他の部分がその働きを補うことができる。
このためダメージを受けてもなかなか症状があらわれず「沈黙の臓器」と呼ばれることがある。症状があらわれたときには病気が進んでいることが多く、早期発見が難しいので注意が必要である。
肝臓病とは
肝臓に炎症が起きたり、細胞が壊れたり、脂肪がたまりすぎるなどして、本来のはたらきができなくなることを肝臓病という。
肝臓病には、肝臓そのものの病気以外にも、周囲の血管や臓器(門脈、胆のう、胆管)に関係する病気などさまざまなものがある。慢性肝炎や銅関連性肝炎など、犬種によって発生の多い肝臓病もある。また、太った猫が食事を摂らなくなると、体脂肪が肝臓に一時に大量に運ばれて蓄積し、肝リピドーシス(脂肪肝)になることがある。
肝臓病と食事
肝臓病には、細菌やウイルスの感染、他の病気に伴うもの、遺伝性など様々な原因がある。原因や症状に合わせた食事管理が必要である。
一般的には肝細胞を再生させるためのタンパク質やカロリー源としての脂肪、肝臓へのダメージを減らすための亜鉛や抗酸化成分、EPA/DHAなどを適度に増量した食事が推奨される。
ただし重度の肝臓病で、高アンモニア血症や腹水がみられる場合は、次のような栄養素を制限する必要がある。
また、発酵性繊維の増量はアンモニアの産生や吸収の軽減に有用である。人での研究をもとに、肝性脳症(神経症状)の改善と、タンパク質・エネルギー利用の改善を期待して、食事にBCAA※を添加することがある。しかし現時点で研究結果は様々である。
軽度の脂肪肝などでは、脂肪を制限した低脂肪食が推奨されるケースもある。
猫の肝リピドーシスでは、食欲が全くなくなるため、自分で食べられるようになるまではチューブなどを用いて強制的に食事を摂らせる必要がある。
※バリン、ロイシン、イソロイシンなどもアミノ酸。