消化器(下痢と便秘)

胃や腸などの「消化器」の役割は、体が必要とする栄養素を体が取り込める大きさまで分解し、それを吸収することである。つまり、消化機能が正常でないと、必要な栄養素を十分に体に取り入れることができなくなり、生命の危機におちいることもある。

各消化器の役割

各栄養素の消化吸収

タンパク質脂肪炭水化物は、胃やすい臓、小腸などから分泌される消化酵素の働きをうけ、小さく分解されてから体内に吸収される。

健康な消化機能を維持するための食事

健康な消化機能を維持するためには、「消化の良い食事」と「良好な腸内環境」が大きな要素となる。

【消化の良い食事】

消化管に対する負担が少なく、食事中の栄養素を十分に吸収することができる。消化管の中に残った未消化物は下痢の原因となることもあり、とくに未消化のタンパク質は、腸内の悪玉菌に分解され糞便の臭いの原因となる。したがって消化の良い食事を与えて未消化物を減らすことが重要である。消化の良い食事を与えると糞便の量が減少し、適切な固さを保ちやすくなる。

【適切な食物繊維

食物繊維の量や種類をバランスよく摂取することで腸のぜん動運動を調節したり、腸内環境を整えることができる。

【腸内細菌バランスの調整】

善玉菌を増やすフラクトオリゴ糖(FOS)や、悪玉菌を減らすマンナンオリゴ糖(MOS)を摂取することで、腸内細菌のバランスを整えることができる。

【有毒物質の吸着】

ゼオライトなどの多孔質の鉱物は、腸管内の有毒物質を吸着して排泄を促し、腸の健康維持に役立つ。

下痢と食事管理

下痢には食べ過ぎなどによる一過性のものもあるが、ウイルスなどの感染、腸やすい臓の炎症、腫瘍、食物アレルギーなど、様々な原因によりおこることがある。
下痢を起こしているときには消化の良い食事を与えることが重要である。犬や猫は、人と違い脂肪の消化・吸収能力が高いため、一部の場合を除いて特に脂肪を制限する必要はない。むしろ、炭水化物のほうが消化管に負担をかけることがあり、特に猫でこの傾向が強い。
下痢を起こしているときには、症状や原因となる疾患に応じて、次のように食事を選択することが大切である。

①高カロリーの高栄養食

先述のとおり、犬や猫では一部の病態を除いて特に脂肪を制限する必要はない。むしろ脂肪は他の栄養素と比べ効率的にエネルギーを摂取できるため、食事量を減らすことで消化管の負担を減らすことができる。特に体重減少が見られる場合や、子犬や子猫の下痢にはこのタイプの食事が推奨される。

②低脂肪食

犬のすい炎のように脂肪の制限が必要な疾患では、低脂肪食が推奨される。ここで言う低脂肪食とは、カロリーあたりの脂肪の量が少ない食事のことである。単に、食事全体に占める脂肪の割合が低い食事、例えば食物繊維の量が多い食事などは、脂肪の割合が少なくてもカロリーあたりの脂肪が比較的多いこともあるので注意が必要である。

③高食物繊維食

大腸粘膜細胞は、腸内の善玉菌が一部の食物繊維を発酵したときに作られる短鎖脂肪酸をエネルギー源として利用する。このため、大腸の疾患のなかには高食物繊維食が推奨されるものもある。また、ストレスによる下痢にも高食物繊維食が推奨される。

④低アレルギー食

食物アレルギーの関与が疑われる場合は低アレルギー食が推奨される。

便秘と食事管理

便秘は糞便中の水分量が少なくなって、便が出にくくなっている状態である。
猫の場合、祖先が砂漠で生活していたため、積極的に水を飲むことが少ない動物といわれている。そのため、猫ではとくに便秘を起こしやすい傾向がある。また超小型犬は室内飼育がほとんどで、運動不足から腸の運動性や水分摂取量が低下し、便秘になりやすい傾向がある。
便秘の場合、食物繊維により腸のぜん動運動を促したり、糞便中の水分を保持して排便しやすい状態になるような食事が推奨される。

※ただし、猫では慢性腎臓病の初期症状のひとつとして便秘が起こることがある。その場合は、腎臓病に適した食事が推奨される。

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●消化のよい食事:
●腸内環境の維持:
●腸内細菌バランスの調整:
●有毒物質の吸着:
●状態に応じて調整:
●便の粘度を増し、スムーズな排便を促す:

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