犬や猫の歯のトラブルは、歯石が蓄積して起こる歯周病がほとんどであり、虫歯はそれほど多くない。これは犬と猫の口腔内は弱アルカリ性で、酸性を好む虫歯菌が繁殖しにくいためである。犬において歯石と歯肉炎は最も多い動物病院での主訴であると報告されている(Lund 1999)。
予防には、歯石を蓄積させないことが大切である。
歯垢(しこう)と歯石
歯冠に付着した細菌が増殖して蓄積すると、歯垢を形成する。歯垢は「プラーク」とも呼ばれ、これに唾液中のカルシウムが結合すると歯石が形成される。唾液が分泌される臼歯付近は、特に歯石が形成されやすい。
歯垢はブラッシングなどで除去することができるが、歯石になると簡単には除去できなくなる。歯垢や歯石の中には多くの細菌が存在し、この細菌が歯肉炎や歯周炎を引き起こす原因となる。この細菌が毛細血管から血液中に入り込み、やがて心臓に運ばれて心臓病の原因となることもある。

ブラッシング
歯垢が歯石にならないうちに、歯垢をブラッシングなどで取り除くことが大切である。しかし、多くの犬や猫は口の周りを触られることを嫌がる。ブラッシングをスムーズに行うには、トレーニングを繰り返して徐々に慣れさせる必要がある。そのためトレーニングはなるべく小さいうちから始めることが推奨される。
デンタルケアと食事
唾液中のカルシウムが歯垢に結合することを防ぐことで、歯石形成を抑えることができる。ポリリン酸ナトリウムは人用の歯磨き粉にも使われている成分で、唾液中のカルシウムと結合し、歯石形成を抑えることに役立つ(Hennet 2007)。
また、よく嚙むことでブラッシング効果を得られるように、フードのキブル(粒)の形や大きさを工夫する方法もある。
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